<Header>
<Author: 杜甫>
<Title: 宿府>
<Format: 七言律詩>
<Year: 1988>
<BookName: 唐詩三百首詳解  上卷>
<Translator: 田部井文雄>
<style: 現代文有假名>
<style2: 日本現代譯文附假名標注>
<TranslatedTitle: 府に宿す>
<BookPage: 382>
<UsedPage: 1>
<Feature: 0>
<End Header>
<Poem>
清秋幕府井梧寒，
獨宿江城蠟炬殘。
永夜角聲悲自語，
中天月色好誰看。
風塵荏苒音書絕，
關塞蕭條行路難。
已忍伶俜十年事，
強移栖息一枝安。
<End Poem>
<Translation>
さわやかな秋（あき）、幕府（ばくふ）の井戸端（いどばた）の梧棚も落葉（らくよう）して寒々（さむざむ）としたようすである。一人（ひとり）で錦江（きんこう）のほとりの町（まち）成都（せいと）に宿直（しゅくちょく）して、ろうそくももう、燃（も）え尽（つ）きようとしてくずれかかっている。

この秋（あき）の夜（よる）ながにひびく角笛（つのぶえ）の音色（おんしょく）に、心（こころ）悲（かな）しんでわたしはひとりごとをいい、中庭（ちゅうてい）を照（て）らす月（つき）の色（いろ）が、まあ美（うつく）しいにはちがいないのだが、今（いま）のわたしがどうしてそれを見（み）て楽（たの）しもうか。

戦乱（せんらん）の世（よ）が続（つづ）いて空（むな）しく歳月（さいげつ）が過（す）ぎ、故郷（こきょう）からの便（たよ）りもなく、この辺境（へんきょう）の町（まち）成都（せいと）はものさびしく、故郷（こきょう）へ帰（かえ）り、この世（よ）を渡（わた）る道（みち）のりは遠（とお）く険（けわ）しい。

これまで、おちぶれさまようことに耐（た）えしのんで十年（じゅうねん）、心（こころ）ならずも、鳥（とり）がわずか一本（いっぽん）の枝（えだ）に移（うつ）りすむように、ささやかな安息（あんそく）を求（もと）めて、この低（ひく）い官職（かんしょく）に甘（あま）んじようとしていいるのだ。
<End Translation>